和歌番号 |
和歌 |
★ |
★ |
0707 |
高き屋に登りて見ればけぶり立つ民の竈はにぎはひにけり |
たかきやに のぼりてみれば けぶりたつ たみのかまどは にぎわいにけり |
高殿に登って見渡せば、あちこちから夕飯の準備に竈から煙が立ち昇っているのが見える。民の暮らしは豊かになったなあ。 |
★ |
★ |
0708 |
初春の初子のけふの玉箒手に取るからにゆらぐ玉の緒 |
はつはるの はつねのきょうの たまばはき てにとるからに ゆらぐたまのお |
初春の初めての子の日の今日飾られる、養蚕する家を掃いた玉を飾り付けてあるホウキ。手に取るだけで揺れて鳴る玉の緒です。 |
★ |
★ |
0709 |
子の日してしめつる野辺の姫小松引かでや千代の蔭を待たまし |
ねのひして しめつるのべの ひめこまつ ひかでやちよの かげをまたなし |
子の日のお祝いをするために標しをした野辺の姫小松。引き抜かないで長い年月を経て常盤の蔭を作るのを待ちましょうか。 |
★ |
★ |
0710 |
君が代の年の数をば白妙の浜の真砂と誰かしきけむ |
きみがよの としのかずをば しろたえの はまのまなごと たれかしきけん |
御君の治世の年数を、真っ白な白浜の無数の真砂として誰が敷いたのでしょう。 |
★ |
★ |
0711 |
若菜生ふる野辺といふ野辺を君がため万代しめて摘まむとぞ思ふ |
わかなおうる のべというのべを きみがため よろづよしめて つまんとぞおもう |
若菜の生えている野辺という野辺を、御君のために永遠に続く世にわたって標をして摘もうと思います。 |
★ |
★ |
0712 |
ゆふだすき千歳をかけて足引きの山藍の色は変らざりけり |
ゆうだすき ちとせをかけて あしびきの やまあいのいろは かわらざりけり |
神事を行う時に木綿の襷をかけて着る特別の衣の青い色は限りなく変わることはないでしょう。 |
★ |
★ |
0713 |
君が代に逢ふべき春の多ければ散るとも桜あくまでぞ見む |
きみがよに あうべきはるの おおければ ちるともさくら あくまでぞみん |
長生きされて迎える春が多いでしょうから、今日は散ってもこれからも飽きるほど見ることでしょう。 |
★ |
★ |
0714 |
住の江の浜の真砂をふむ鶴は久しき跡をとむるなりけり |
すみのえの はまのまなごを ふむたづワ ひさしきあとを とむるなりけり |
住の江の浜の真砂を踏む鶴は、これからも長く足跡を留め置くのでしょうね。 |
★ |
★ |
0715 |
年ごとに生ひそふ竹の代々を経て変らぬ色を誰とかは見む |
としごとに おいそうたけの よよをへて かわらぬいろを たれとかワみん |
年ごとに生え増えていく竹の節と節の間のような代、その代を代々経ても変わらない緑の色を誰のことでしょう。 |
★ |
★ |
0716 |
千歳ふる尾上の松は秋風の声こそ変れ色は変らず |
ちとせふる おのえのまつワ あきかぜの こえこそかわれ いろワかわらず |
限りなく古い尾上の松は、秋風が吹く頃には秋の音に変わるけどその緑の色は変わらないです。 |
★ |
★ |
0717 |
山川の菊の下水いかなれば流れて人の老いを堰くらむ |
やまがわの きくのしたみず いかなれば ながれてひとの おいをせくらん |
菊水を飲むと不老長寿を保てるという菊の下を流れる山川の水。それ故に、生きていく人の老いを堰きとめるでしょう。 |
★ |
★ |
0718 |
祈りつつなほ長月の菊の花いづれの秋か植ゑて見ざらむ |
いのりつつ なおながつきの きくのはな いずれのあきか うえてみざらん |
君が代がさらに長く続きますようにと祈りながら、長月(9月)に咲く菊の花をいつか植えて賞美しない秋があるのでしょうか。 |
★ |
★ |
0719 |
山人の折る袖にほふ菊の露うちはらふにも千代は経ぬべし |
やまびとの おるそでにおう きくのつゆ うちはらうにも ちよワへぬべし |
仙人が手折ると、その袖に匂う菊の露。その露を払う短い間にも千年は経ってしまうでしょう。 |
★ |
★ |
0720 |
神無月もみぢも知らぬ常盤木に万代かかれ峰の白雲 |
かんなづき もみじもしらぬ ときわぎに よろずよかかれ みねのしらくも |
10月になっても紅葉することを知らない常盤木(常緑広葉樹林)に、限りなく続く世にわたって懸かれ峰の白雲よ。 |
★ |
★ |
0721 |
山風は吹けど吹かねど白波の寄する岩根は久しかりけり |
やまかぜは ふけどふかねど しらなみの よするいわねワ ひさしかりけり |
山風は吹いても吹かなくても、白波が絶えず寄って来る岩の元はずっと変わりませんよ。 |
★ |
★ |
0722 |
曇りなく千歳に澄める水の面に宿れる月の影ものどけし |
くもりなく ちとせにすめる みずのおもに やどれるつきの かげものどけし |
曇ることなく千年にわたって澄める池の水の面に宿っている月の光ものどかなことです。 |
★ |
★ |
0723 |
池水の代々に久しく澄みぬれば底の玉藻も光見えけり |
いけみずの よよにひさしく すみぬれば そこのたまもも ひかりみえけり |
池の水は代々ずっと澄んでいるので、池の底の玉藻もその光が見えます。 |
★ |
★ |
0724 |
君が代の千歳の数も隠れなく曇らぬ空の光にぞ見る |
きみがよの ちとせのかずも かくれなく くもらぬそらの ひかりにぞみる |
御君の限りなく続く御代も雲に隠れることなく青い空の日の光に見えます。 |
★ |
★ |
0725 |
住の江に生ひそふ松の枝ごとに君が千歳の数ぞこもれる |
すみのえに おいそうまつの えだごとに きみがちとせの かずぞこもれる |
住ノ江に生えて増えていく松の枝ごとに御君の限りなく続く御代の年数が守られてます。 |
★ |
★ |
0726 |
万代を松の尾山の蔭茂み君をぞ祈るときはかきはに |
よろずよを まつのおやまの かげしげみ きみをぞいのる ときワかきワ(常盤堅磐)に |
限りなく続く世を待つ、緑の松の松尾山の木陰が茂っているので、おかげをもって永久不変お栄になるようにと御君をお祈りしますと。 |
★ |
★ |
0727 |
相生の小塩の山の小松原今より千代の蔭を待たなむ |
あいおいの おしおのやまの こまつばら いまよりちよの かげをまたなん |
二つ並んで生えている小塩山の小松原の小松が今より千年も栄え茂るその影を待っていて欲しい。 |
★ |
★ |
0728 |
子の日する御垣のうちの小松原千代をばほかのものとやは見る |
ねのひする みかきのうちの こまつばら ちよをばほかの ものとやワみる |
子の日のお祝いをする宮中を囲っている御垣の内にある小松原、千代の栄えを御垣の外のものと見ることがあるだろうか。 |
★ |
★ |
0729 |
子の日する野辺の小松を移し植ゑて年の緒長く君ぞ引くべき |
ねのひする のべのこまつを うつしうえて としのおながく きみぞひくべき |
子の日のお祝いをする野辺の小松を移し植えて、長い年月にわたってわが君が根ごと曳かれることでしょう。 |
★ |
★ |
0730 |
君が代は久しかるべし度会や五十鈴の川の流れ絶えせて |
きみがよワ ひさしかるべし わたらいや いすずのかわの ながれたえせで |
君は代は久しいことでしょう。伊勢国の度会を流れる五十鈴川(御裳濯川)の流れが絶えることなく。 |
★ |
★ |
0731 |
常盤なる松にかかれる苔なれば年の緒長きしるべとぞ思ふ |
ときわなる まつにかかれる こけなれば としのおながき しるべとぞおもう |
常に緑である松にかかれる苔であるから、長い年月を生きていく道案内になると思います。 |
★ |
★ |
0732 |
君が代に逢へるは誰もうれしきを花は色にも出でにけるかな |
きみがよに あえるワたれも うれしきを はなワいろにも いでにけるかな |
わが君の御代にお逢いできたことは誰もうれしいことですが、桜の花はその色にもはっきりとその喜びを表しています。 |
★ |
★ |
0733 |
身に代えて花の惜しまじ君が代に見るべき春の限りなければ |
みにかえて はなのおしまじ きみがよに みるべきはるの かぎりなければ |
わが身の命に代えて桜の花の散るのを惜しんだりしません。君が代がずっと続き、花を見る春は限りなく続くことでしょうから。 |
★ |
★ |
0734 |
あめのした芽ぐむ草木のめもはるに限りも知らぬ御代の末々 |
あめのした めぐむくさきの めもはるに かぎりもしらぬ みよのすえずえ |
天の下、春雨の恵みのもとで草木の芽が、目も遥か限りなく続き、、わが君の御代は末々まで限りなく続くでしょう。 |
★ |
★ |
0735 |
おしなべて木の芽も春のあさみどり松にぞ千代の色はこもれる |
おしなべて このめもはるの あさみどり まつにぞちよの いろワこもれる |
すべて一様にして木々の芽も張ってきて、春は一面の浅緑色におおわれてますが、松の緑にこそ千年続くであろうわが君の色が籠ってます。 |
★ |
★ |
0736 |
敷島や大和島根も神代より君がためとや固めおきけむ |
しきしまや やまとしまねも かみよより きみがためとや かためおきけん |
日本という国も神代の時代からわが君のためにと神々がしっかりと堅めておかれたのだろうか。 |
★ |
★ |
0737 |
濡れて干す玉串の葉の露霜に天照る光幾代へぬらむ |
ぬれてほす たまぐしのはの つゆしもに あまてるひかり いくよへぬらん |
濡れては干すサカキの葉に置く露や霜に天に照る光が宿って幾代が過ぎたことでしょう。 |
★ |
★ |
0738 |
君が代は千代ともささじ天の戸や出づる月日の限りなければ |
きみがよは ちよともささじ あまのとや いづるつきひワ かぎりなければ |
わが君の御代を千代ということでも数字を差ししめしたりするまい、天の戸を出て世を照らす月も日も行き詰ってしまうことはないのですから。 |
★ |
★ |
0739 |
わが道を守らば君を守るらむよはひはゆづれ住吉の松 |
わがみちを まもらばきみを まもるらん よわいワゆずれ すみよしのまつ |
住吉の神が私の歌の道を守って下さるなら、わが君を守ってくださるでしょう。それならわが君に齢を譲ってください住吉の松よ。 |
★ |
★ |
0740 |
高砂の松も昔になりぬべしなほ行末は秋の夜の月 |
たかさごの まつもむかしに なりぬべし なおゆくすえワ あきのよのつき |
高砂の松もいつかは朽ち果てるでしょう。わが君のさらなる末の友はずっと変わらず照る秋の夜の月です。 |
★ |
★ |
0741 |
藻塩草かくとも尽きじ君が代の数によみおく和歌の浦波 |
もしおぐさ かくともつきじ きみがよの かずによみおく わかのうらなみ |
藻塩草(詠草)をどんだけかき(書き)集めても尽きることはないでしょう。ずっと続くわが君の御代の数と同じように寄せる和歌浦の波は。 |
★ |
★ |
0742 |
うれしさや片敷く袖に包むらむけふ待ちえたる宇治の橋姫 |
うれしさや かたしくそでに つつむらん きょうまちえたる うじのはしひめ |
嬉しさを衣の片袖に包んでいるのでしょうか。ずっと待っていて今日逢うことができた宇治の橋姫は。 |
★ |
★ |
0743 |
年へたる宇治の橋守言問わむ幾代になりぬ水の水上 |
としへたる うじのはしもり こととわん いくよになりぬ みずのみなかみ |
歳のいった宇治の橋守りに尋ねてみましょう。水上から水が流れるようになって幾代になるのでしょうか。 |
★ |
★ |
0744 |
七十にみつの浜松老いぬれど千代の残りはなほぞはるけき |
ななそぢに みつのはままつ おいぬれど ちよののこりワ なおぞはるけき |
御津の浜に生えている松は70に満つくらい老いぬれたけど、千代に至るまで残りは、まだはるか先のことです。 |
★ |
★ |
0745 |
八百日ゆく浜の真砂を君が代の数に取らなむ沖つ島守 |
やおかゆく はまのまさごを きみがよの かずにとらなん おきつしまもり |
通過するのに800日もかかる砂浜の砂の数をわが君の御代の数として数えてください、沖の島の島守よ。 |
★ |
★ |
0746 |
春日山都の南しかぞ思ふ北の藤波春に逢へとは |
かすがやま みやこのみなみ しかぞおもう きたのふじなみ はるにあえとわ |
都の南にある春日山にて、このように思っている。藤原氏北家が繁栄するようにと。 |
★ |
★ |
0747 |
常盤なる吉備の中山おしなべて千歳を松の深き色かな |
ときわなる きびのなかやま おしなべて ちとせをまつの ふかきいろかな |
変ることのない吉備の中山にある一様に緑である松は千歳を待つことを願って深い色をしてます。 |
★ |
★ |
0748 |
あかねさす朝日の里の日蔭草豊の明りのかざしなるべし |
あかねさす あさひのさとの ひかげぐさ とよのあかりに かざしなるべし |
近江国の朝日の里のひかげのかずらは、とよのあかりのせちえ(豊明節会)の時に使うかざし(挿頭)となって光を添えるのでしょう。 |
★ |
★ |
0749 |
すべらぎをときはかきはにもる山の山人ならし山かづらせり |
すべらぎを ときワかきワ(常盤堅磐)に もるやまの やまびとならし やまかづらせり |
天皇を永久に堅固にお守りする守山の仙人のようなひかげのかずらをかざしています。 |
★ |
★ |
0750 |
とやがへる鷹の尾山の玉椿霜をば経とも色は変らじ |
とやがえる たかのおやまの たまつばき しもをばふとも いろはかわらじ |
鷹の羽が抜け替わる鷹尾山の玉椿は霜が何年も降っても常盤の色は変りませんよ。 |
★ |
★ |
0751 |
曇りなき鏡の山の月を見て明らけき世を空に知るかな |
くもりなき かかみのやまの つきをみて あきらけきよを そらにしるかな |
少しの曇りもない鏡山に登った明らかな澄んだ月を見て御君の明らかな世を感じ取りますよ。 |
★ |
★ |
0752 |
大江山こえていく野の末遠み道ある世にも逢ひにけるかな |
おおえやま こえていくのの すえとおみ みちあるよにも あいにけるかな |
大江山を越えていく生野まで行く道は遠いしその先も続いてる。そのように遥かに続く正しい王道の御代に逢いました。 |
★ |
★ |
0753 |
近江のや坂田の稲を掛け積みて道ある御代の初めにぞ舂く |
おうみのや さかたのいねを かけつみて みちあるみよの はじめにぞつく |
近江国の坂田の稲を稲木に掛け積みて正しい王道の御代の初めの大嘗会に臼ずきます |
★ |
★ |
0754 |
神代よりけふのためとや八束穂に長田の稲のしなひそめけむ |
かみよより きょうのためとや やつかほに おさだのいねの しないそめけん |
神代の昔から今日の大嘗会のためにと長田の「八束」もある長い稲の穂が重くなってしない始めたのでしょうか。 |
★ |
★ |
0755 |
立ち寄れば涼しかりけり水鳥の青羽の山の松の夕風 |
たちよれば すずしかりけり みずどりの あおばのやまの まつのゆうかぜ |
立ち寄ると涼しいです、やっぱり。水鳥の青い羽を思わせる青羽の山の松葉を吹きぬける夕風は。 |
★ |
★ |
0756 |
常盤なる松井の水をむすぶ手のしづくごとにぞ千代は見えける |
ときわなる まついのみずを むすぶての しずくごとにぞ ちよワみえける |
常盤の緑である松井の井戸の水をすくう手からこぼれる雫ごとに御君の千代の数が見えますよ。 |
★ |
★ |