| 和歌番号 |
和歌 |
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| 1852 |
知るらめやけふの子の日の姫小松生ひむ末まで栄ゆべしとは |
| しるらめや きょうのねのひの ひめこまつ おいんすえまで さかゆべしとわ |
| 知っているのでしょうか。今日の子の日に引いた姫小松が、老木になるずっと先の時代まで、貴方が栄えるということを。 |
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| 1853 |
なさけなく折る人つらしわが宿のあるじ忘れぬ梅の立枝を |
| なさけなく おるひとつらし わがやどの あるじわすれぬ うめのたちえを |
| 思いやりなく折る人はむごいです。家の主の私を忘れず、この筑紫まで飛んできた梅の立ち枝を折るような人は。「東風吹かば〜〜
」 |
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| 1854 |
補陀落の南の岸に堂立てて今ぞ栄えむ北の藤波
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| ふだらくの みなみのきしに どうたてて いまぞさかえん きたのふじなみ |
| 補陀落山の海の南岸になぞらえ、猿沢の池の南にこの御堂を建てて、その功徳によって今ぞ栄えるであろう藤原の北家。 |
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| 1855 |
夜や寒き衣やうすき片そぎの行合ひの間より霜やおくらむ |
| よやさむき ころもやうすき かたそぎの ゆきあいのまより しもやおくらん |
| 夜が寒いのか衣が薄いのか、千木の片削ぎの交わっている隙間からもれて霜がおいているのだろうか。住吉さんは朽ちているのだぁ。 |
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| 1856 |
いかばかり年は経ねども住の江の松ぞふたたび生ひ変りぬる |
| いかばかり としワへねども すみのえの まつぞふたたび おいかわりぬる |
| 神の時間でいうならそんなに年は経てないけど、住之江の松は2度生え変わったのです。 |
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| 1857 |
むつましと君は白波みづ垣の久しき代より祝ひそめてき |
| むつまじと きみワしらなみ みずがきの ひさしきよより いわいそめてき |
| 親しい間柄とあなたは知らないかもしれませんが、久しい昔より皇室を祝して心を深く寄せてきたのです。 「伊勢物語117段」 |
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| 1858 |
人しれず今や今やとちはやぶる神さぶるまで君をこそ待て |
| ひとしれず いまやいまやと ちはやぶる かみさぶるまで きみをまて |
| 密かに今や今やと神が老人の姿になるまであなたの参拝を待っているのです。 |
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| 1859 |
道遠しほどもはるかに隔たれり思ひおこせよわれも忘れじ |
| みちとおし ほどもはるかに へだたれり おもいおこせよ われもわすれじ |
| 陸奥の国からこの熊野まではとても遠い。時間もだ。来ずとも信仰の心を起こして、もって来なさい。私もあなたをわすれません。 |
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| 1860 |
思ふこと身にあまるまでなる滝のしばし淀むを何恨むらむ |
| おもうこと みにあまるまで なるたきの しばしよどむを なにうらむらん |
| 願い事は身に余るほどに成就しているのに、鳴り響く滝がしばし淀むように少しの間望みが沈滞しているのを恨むのか。 |
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| 1861 |
われ頼む人いたづらになしはてばまた雲分けて登るばかりぞ |
| われたのむ ひといたずらに なしはてば またくもわけて のぼるばかりぞ |
| わたしを祈願する人の願い事をむなしくしてしまうなら、昔天下ってきたように、今度は天雲を分けて天に昇って帰る行くだけだ。 |
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| 1862 |
鏡にも影みたらしの水の面にうつるばかりの心とを知れ |
| かがみにも かげみたらしの みずのおもに うつるばかりの こころとをしれ |
| 神鏡にも私の姿が映って見えるように御手洗川の川面にも映っている私の信じる者を守るという心だけを知っておきなさい。 |
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| 1863 |
ありきつつ来つつ見れどもいさぎよき人の心をわれ忘れめや |
| ありきつつ きつつみれども いさぎよき ひとのこころを われわすれめや |
| ずっとこの国にいて、ここにやって来たけれど、清々しく正しい人の心を私は忘れたりしませんよ。 |
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| 1864 |
西の海立つ白波の上にして何過ぐすらむかりのこの世を |
| にしのうみ たつしらなみの うえにして なにすぐすらむ かりのこのよを |
| 西の海に立つ白波の上でどうして過ごすことが出来るのだろうか。仮初めのこの世であるのに。 |
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| 1865 |
白波に玉依姫の来しことはなぎさやつひに泊りなりけむ |
| しらなみに たまよりひめの こしことワ なぎさやついに とまりなりけん |
| 白波に乗って玉が寄せるように玉依姫がこの国にやって来たことは、渚が玉のついの泊りだったからだろうか。 |
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| 1866 |
久方の天の八重雲ふり分けてくだりし君をわれぞ迎えし |
| ひさかたの あまのやえぐも ふりわけて くだりしきみを われぞむかえし |
| 天の幾重にも重なった雲を振り分けて降臨されてきたあなたをお迎えしたのは私です。 |
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| 1867 |
飛びかける天の岩舟たづねてぞ秋津島には宮はじめける |
| とびかける あまのいわぶね たずねてぞ あきづしまにワ みやはじめける |
| 空を飛んでいく天の岩舟を訪ね求めて神武天皇は秋津島大和の国に都を初めて営まれたのである。 |
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| 1868 |
大和かも海にあらしの西吹かばいづれの浦にみ舟つながむ |
| やまとかも うみにあらしの にしふかば いずれのうらに みふねつながん |
| 日本にしようかな。海に強い西風が吹いたなら、何処の裏に船を繋げましょうか。 |
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| 1869 |
おく霜に色も変らぬ榊葉の香をやは人のとめて来つらむ |
| おくしもに いろもかわらぬ さかきばの かをやワひとの とめてきつらん |
| 霜が置いても色が変わらない榊葉の香りを求めて人はここへやって来たのだろうか。 |
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| 1870 |
宮人の摺れる衣にゆふだすき掛けて心を誰に寄すらむ |
| みやびとの すれるころもに ゆうだすき かけてこころを だれによすらん |
| 神に仕える人は植物の顔料を摺りつけて模様を染めた衣服に神事の時に用いる襷をかけて、誰に心を懸け、心を寄せてるのだろう。 |
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| 1871 |
神風や御裳濯川のそのかみに契りしことの末をたがふな |
| かみかぜや みもすそがわの そのかみに ちぎりしことの すえをたがうな |
| 天照大神よ、御裳濯川の川上に鎮座するあなたとわが遠祖が約束したことを末永くお違えにならないでくださいね。 |
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| 1872 |
契りありてけふ宮川のゆふかづら長き世までもかけて頼まむ |
| ちぎりありて きょうみやがわの ゆうかずら ながきよまでも かけてたのまん |
| 前世からの約束があって、今日宮川を渡って外宮に参拝しました。木綿鬘を掛け、末永くお守りくださることを祈願します。 |
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| 1873 |
うれしさもあはれもいかにこたへまし古里人に問はれましかば |
| うれしさも あわれもいかに こたえまし ふるさとびとに とわれましかば |
| 嬉しさや懐かしい気持ちなどもどのように受け答えしたでしょう。もし都の人が斎宮を訪ねてくださったら。 |
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| 1874 |
神風や五十鈴川波かず知らず澄むべき御代にまた帰り来ん |
| かみかぜや いすずかわなみ かずしらず すむべきみよに またこえりこん |
| 五十鈴川の川波が数えきれなく、水が澄んでいるように、ずっと続く我が君の御代に、私もまた長生きして戻って来ましょう。 |
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| 1875 |
ながめばや神路の山に雲消えて夕べの空を出でむ月影 |
| ながめばや かみぢのやまに くもきえて ゆうべのそらを いでんつきかげ |
| じっと見つめていたい。神路山に懸かる雲が消えて、清く澄んだ夕空にでる月の光を。 |
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| 1876 |
神風やとよみてぐらになびくしでかけて仰ぐといふもかしこし |
| かみかぜや とよみてぐらに なびくしで かけてあおぐと いうもかしこし |
| 神風に吹かれて豊幣帛に垂らした四手がなびく、その四手を掛けて神の心に掛けておいてくださいと言うのも恐れ多いことです。 |
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| 1877 |
宮柱下つ岩根にしき立ててつゆも曇らぬ日のみ影かな |
| みやばしら したついわねに しきたてて つゆもくもらぬ ひのみかげかな |
| 神宮の社殿の柱は、地面の下の磐石にしっかり立てられて、少しの雲もない日の光に照らされてるなあ。 |
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| 1878 |
神路山月さやかなる誓ひありて天の下をば照らすなりけり |
| かみぢやま つきさやかなる ちかいありて あめのしたをば てらすなりけり |
| 神路山に月がさやかに照っている。仏が衆生の救済を願って定めた誓いのように、神の誓願によって天下を照らしてるのだなあ。 |
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| 1879 |
さやかなる鷲の高嶺の雲居より影和らぐる月読の杜 |
| さやかなる わしのたかねの くもいより かげやわらぐる つきよみのもり |
| はっきりと照らしている、釈迦が法華経を説いた霊鷲山(りょうじゅせん)の空から出で、ここでは和かに照らしている月読宮の月。 |
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| 1880 |
和らぐる光にあまる影なれや五十鈴河原の秋の夜の月 |
| やわらぐる ひかりにあまる かげなれや いすずかわらの あきのよのつき |
| 大日如来が天照大神と現れた和らげられた光の残りの光なのでしょうか。五十鈴川の河原を照らす秋の夜の月は。 |
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| 1881 |
立ちかへりまたも見まくのほしきかな御裳裾川の瀬々の白波 |
| たちかえり またもみまくの ほしきかな みもすそがわの せぜのしらなみ |
| 引き返ってまた見たいな、御裳裾川のあちこちの浅い所に立つ白波を。 |
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| 1882 |
神風や五十鈴の川の宮柱いく千代すめと立ちはじめけむ |
| かみかぜや いすずのかわの みやばしら いくちよすめと たちはじめけん |
| 五十鈴川のほとり、神宮の社殿の柱は、川がいつまでも澄むがごとく幾千年も神が住むようにと決められてまず建てられたようです。 |
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| 1883 |
神風や玉串の葉を取りかざし内外の宮に君をこそ祈れ |
| かみかぜや たまぐしのはを とりかざし うちとのみやに きみをこそいのれ |
| 玉串として榊葉を取り、挿頭として髪に挿し、内宮、外宮に他ならぬ我が君の幾千代をお祈りしますよ。 |
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| 1884 |
神風や山田の原の榊葉に心のしめを掛けぬ日ぞなき |
| かみかぜや やまだのはらの さかきばに こころのしめを かけぬひぞなき |
| 山田の原の榊葉にしめ縄をかけ、身を慎んで心から神に祈らない日はありません。 |
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| 1885 |
五十鈴川空やまだきに秋の声下つ岩根の松の夕風 |
| いすずがわ そらやまだきに あきのこえ したついわねの まつのゆうかぜ |
| 五十鈴川のほとり、内宮の清く澄んだ空にもう秋の声がするのでしょうか。下の盤石に生えてる松に吹く夕風の涼しさよ。 |
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| 1886 |
ちはやぶる香椎の宮のあや杉は神のみそぎに立てるなりけり |
| ちはやぶる かしひのみやの あやすぎワ かみの御衣木に たてるなりけり |
| 香椎の宮のあや杉は、神仏の像を作るのに用いる木材、ご神木として立っているのですね。 |
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| 1887 |
榊葉にそのいふかひはなけれども神に心を掛けぬまぞなき |
| さかきばに そのいうかいは なけれども かみにこころを かけぬまぞなき |
| 榊葉に木綿を結び付けるように歌をつけ、言いがいはないですが神に心を掛けて祈らない日はありません。 |
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| 1888 |
年を経て憂き影をのみみたらしの変る世もなき身をいかにせむ |
| としをへて うきかげをのみ みたらしの かわるよもなき みをいかにせん |
| 長い年月の間、私の辛い姿を見て来た賀茂の御手洗川は何も変わらない。そのように何も変わらない私の境遇はどうしたらいいのか。 |
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| 1889 |
月さゆるみたらし川に影見えて氷に摺れる山藍の袖 |
| つきさゆる みたらしがわに かげみえて こおりにすれる やまあいのそで |
| 月の冴える光が御手洗川に映って、川面に張った氷に摺り模様をつけたような舞人の着る山藍摺りの小忌衣(おみごろも)の袖。 |
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| 1890 |
ゆうしでの風に乱るる音冴えて庭白妙に雪ぞつもれる |
| ゆうしでの かぜにみだるる おとさえて にわしろたえに ゆきぞつもれる |
| 木綿四手が風に吹かれて乱れている、その音も澄み切って、冷え冷えと社の庭には真っ白に雪が降り積もっている。 |
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| 1891 |
君を祈る心の色を人問はば糺の宮のあけの玉垣 |
| きみをいのる こころのいろを ひととわば ただすのみやの あけのたまがき |
| わが君の千代をお祈りする私の心の色を人が尋ねたら、下鴨神社か河合宮(ただすのみや)の朱(あけ)の玉垣の色と答えましょう。 |
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| 1892 |
跡垂れし神にあふひのなかりせば何に頼みを掛けて過ぎまし |
| あとたれし かみにあうひの なかりせば なににたのみを かけてすぎまし |
| 古来の賀茂の神迎え神事である御阿礼(みあれ)の日や、神事に用いる葵がなかったら何に祈願を掛けて過ごしたらいいのか。 |
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| 1893 |
大御田のうるほふばかり堰きかけて井堰に落とせ川上の神 |
| おおみたの うるおうばかり せきかけて いせきにおとせ かわかみのかみ |
| 神田に溢れるばかりに雨を降らせ、堰き止めて、井堰に落してください、川上に鎮座する貴船の水神よ。 |
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| 1894 |
石川やせみの小川の清ければ月も流れを尋ねてぞ澄む |
| いしかわや せみのおがわの きよければ つきもながれを たずねてぞすむ |
| 石川の瀬見の小川(賀茂川のこと)は清らかなので、月もその流れを捜し求めて川面に映って澄んでいるのです。 |
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| 1895 |
万代を祈りぞかくるゆうだすき春日の山の峰のあらしに |
| よろずよを いのりぞかくる ゆうだすき かずがのやまの みねのあらしに |
| わが君の万代を心を掛けて祈ります。木綿襷を掛けて、春日山の峰に吹く神の威である強い風の中で。 |
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| 1896 |
けふ祭る神の心やなびくらむしでに波立つ佐保の川風 |
| きょうまつる かみのこころや なびくらん しでになみたつ さほのかわかぜ |
| 今日お祭りする春日の神様の心は私の願いを受けて下さるのでしょうか。四手が波立つ佐保川の川風に靡いてます。 |
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| 1897 |
天の下三笠の山の陰ならで頼む方なき身とは知らずや |
| あめのした みかさのやまの かげならで たのむかたなき みとはしらずや |
| 雨が降る時に笠以外に頼れるものはないように、三笠山の山蔭におられる春日の神にお願いするしかないこの身を知ってますか。 |
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| 1898 |
春日野のおどろの道のうもれ水末だに神のしるしあらはせ |
| かすがのの おどろのみちの うもれみず すえだにかみの しるしあらわせ |
| 春日野のいばらの生い茂る道に埋もれて流れる水のように公卿の主流から埋もれた私ですが、子孫には神のご加護を願います。 |
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| 1899 |
千代までも心して吹けもみぢ葉を神も小塩の山おろしの風 |
| ちよまでも こころしてふけ もみじばを かみのこしおの やまおろしのかぜ |
| 千代の代まで心して吹きなさい、小塩山の山おろしの風よ。紅葉が散らないようにね、大原野の神も惜しんでおられますから。 |
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| 1900 |
小塩山神のしるしを松の葉に契りし色はかへるものかは |
| こしおやま かみのしるしを まつのはに ちぎりしいろワ かえるものかわ |
| 小塩山よ、大原野の神のご加護を待ちますが、神が約束した松の常盤の緑の色は褪せることがあるのでしょうか。 |
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| 1901 |
和らぐる影ぞ麓に曇りなきもとの光は峰に澄めども |
| やわらぐる かげぞふもとに くもりなき もとのひかりは みねにすめども |
| 和らげられた光は、比叡の山麓にある日吉の神として曇りありません。本来の光は本地仏である薬師如来として峰に住んでますが。 |
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| 1902 |
わが頼む七の社のゆふだすきかけても六の道に帰すな |
| わがたのむ ななのやしろの ゆうだすき かけてもむつの みちにかえすな |
| 私が信仰する日吉七社の神々よ。決して六道に輪廻させないでください。 |
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| 1903 |
おしなべて日吉の影は曇らぬに涙のあやしききのふけふかな |
| おしなべて ひよしのかげワ くもらぬに なみだのあやしき きのうきょうかな |
| あまねく世を照らす日吉の神の御威光は全然曇ってないのに、涙があふれて、その光も見えない昨日今日ですね。 |
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| 1904 |
諸人の願ひをみつの浜風に心涼しきしでの音かな |
| もろびとの ねがいをみつの はまかぜに こころすずしき しでのおとかな |
| 多くの人の願い事を満たしてくれる日吉の神に近い三津の浜の風に吹かれて、心も清々しい四手の音ですね。 |
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| 1905 |
覚めぬれば思ひあはせて音をぞ泣く心づくしのいにしへの夢 |
| さめぬれば おもいあわせて ねをぞなく こころづくしの いにしえのゆめ |
| 目覚めるとわが身と重ね合わせて声をあげて泣いてしまう。心から痛ましめられた、筑紫での古の夢のような菅原道真公の悲劇を。 |
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| 1906 |
咲きにほふ花のけしきを見るからに神の心ぞ空に知らるる |
| さきにおう はなのけしきを みるからに かみのこころぞ そらにしらるる |
| 色美しく咲く桜の花の眺めと同時に、熊野の御神の心が空にはっきりと分かります。 |
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| 1907 |
岩にむす苔踏みならすみ熊野の山のかひある行末もがな |
| いわにむす こけふみならす みくまのの やまのかい(峡)ある ゆくすえもがな |
| よく人が通り岩に生えてる苔を踏み、平らにする熊野の山の谷間、そのかいのようなかいある将来であって欲しいと祈る。 |
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| 1908 |
熊野川くだす早瀬のみなれ棹さすが見慣れぬ波の通ひ路 |
| くまのがわ くだすはやせの みなれさお さすがみなれぬ なみのかよいぢ |
| 熊野川を下る船が早瀬にさす見馴れた棹、見馴れたとはいえ、やはり見馴れない波を分ける通い路です。 |
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| 1909 |
立ち昇る塩屋のけぶり浦風になびくを神の心ともがな |
| たちのぼる しおやのけむり うらかぜに なびくをかみの こころともがな |
| 立ち昇る塩焼き小屋の藻塩の煙が浦風に吹かれてたなびく様を、願いを納受される塩屋の王子の神のみ心として見たいです。 |
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| 1910 |
岩代の神は知るらむしるべせよ頼む憂き世の夢の行末 |
| いわしろの かみワしるらん しるべせよ たのむうきよの ゆめのゆくすえ |
| 岩代王子の神は知っておられるでしょう。道しるべしてくださいと願います。この夢のような憂き世でのこれから先のことを。 |
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| 1911 |
契りあればうれしきかかる折に逢ひぬ忘るな神も行末の空 |
| ちぎりあれば うれしきかかる おりにあいぬ わするなかみも ゆくすえのそら |
| 宿縁により、遷宮のあった年の内に参詣する嬉しい機会があった。私も忘れませんが神も忘れないで我が将来をお守りください。 |
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| 1912 |
年経とも越の白山忘れずはかしらの雪をあはれとも見よ |
| としふとも こしのしらやま わすれずワ かしらのゆきを あわれともみよ |
| 歳を経て白山権現を祭る客人宮にお参りにきました。私のことをお忘れでないなら頭の雪、白髪を哀れと思って見てください。 |
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| 1913 |
住吉の浜松が枝に風吹けば波の白木綿かけぬまぞなき |
| すみよしの はままつがえに かぜふけば なみのしらゆう かけぬまぞなき |
| 住吉の浜松の枝に風が吹くので、枝に白木綿のような波がかからない時はありません。 |
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| 1914 |
榊葉の霜うち払ひかれずのみ住めとぞ祈る神の御前に |
| さかきばの しもうちはらい かれずのみ すめとぞいのる かみのみまえに |
| 榊葉に置く霜を打ち払い、枯れないように、あのお方の訪れが離(か)れることなく通ってきてほしいと祈ります。神のみ前に。 |
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| 1915 |
川社しのにおりはへ干す衣いかに干せばか七日ひざらむ |
| かわやしろ しのにおりはえ ほすころも いかにほせばか なぬかひざらん |
| 六月祓(みなづきばらえ)などの時に川瀬に神を祭る仮の社、しなやかにずっと流れる川の水。どのように流れると7月7日にお会いできるのか。 |
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